かつて着物は自分の寸法で仕立てるオーダーメイドが主でしたが、最近はリユースや通販などで仕立て上がりの着物を購入する方が増えています。
着てみたい着物があってもサイズがわからないので購入できないと諦めていませんか?
一度サイズを測って着物の寸法を決めておくと、その寸法に合わせて着物を選んだり仕立て直したりがスムーズにできます。
今回は着物のサイズの決め方をまとめてみました。
サイズがわかれば選択肢も増え、さまざまな着こなしに挑戦できますね。
マイサイズを知っていろいろな着物を楽しんでみませんか。
着物の各部名称
着物には洋服と違う独自の名称が付いています。
各部の名称がわかると採寸や着付けの際に便利です。
マイサイズを把握するために男性は着丈と裄を、女性は裄を採寸します。
裄とは首の後ろ付け根から手首までの長さのことです。
肩幅と袖幅を合わせたものを裄といいます。
身丈とは着物全体の長さのことで、身長と同程度の長さです。
お端折りのない着物の長さのことを対丈といいます。
男物はお端折りがないため、身丈=着丈と覚えておきましょう。
後身頃は後幅、前身頃は前幅、衽幅の寸法が必要となります。
後身頃と前身頃を合わせた幅が身幅です。
袖丈は袖山から袖底までの長さ、袖付けは袖と身頃が縫い合わせてある部分です。
袖丈、袖付けも着物を基にして長襦袢、コート、羽織などの寸法が決まります。
長襦袢やコート、羽織などの袖口下にある丸みも同じサイズにしておきましょう。
具体的な寸法の決め方は「マイサイズを知る」で説明します。
尺とcm
着物の寸法は基本的に「鯨尺」を使用します。
尺には曲尺(かねじゃく)と鯨尺(くじらじゃく)があり、鯨尺の1尺は曲尺で1尺2寸です。
「曲尺」は主に建築で使われ、和服の寸法には「鯨尺」を使います。
単位は丈(じょう)、尺(しゃく)、寸(すん)、分(ぶ)、厘(りん)といい、1丈は10尺のことです。
それぞれ換算すると1丈=10尺=100寸=1000分となります。
鯨尺の1尺は37.9cm、1寸は3.79cmです。
織物の単位に反(たん)、疋(ひき)があります。
着物1着分の3丈(約12m)が1反となり、2反で1疋です。
マイサイズを知る
自分に合う着物を身につけるためには自分自身の寸法を知っておくことが大切です。
大きいサイズのものを購入してしまったら身丈は多少の調節ができますが、裄はほとんど調節ができません。
裄は背中の中心から手首までの寸法を実際に測ってマイサイズを把握しておきます。
すでに所有している着物の寸法を実測し、その着物にサイズを合わせて購入するのもいいでしょう。
複数ある場合は、お持ちの着物の中でもきれいに着付けられるもの、着崩れしないものの寸法を参考にします。
袖幅は裄の1/2もしくはやや広めに、肩幅と5分程度の差をつけます。
肩幅は裄から袖幅を引いた寸法です。
袖付けは帯の締める高さで変わり、年齢や身長などを考慮して決めます。
繰り越しは一般的には5分にしますが、ふくよかな方や首が太い方は7分にします。
前幅や後幅はヒップのサイズ、体型により調整する必要がありますが、目安としては次のように計算しましょう。
前幅 | ヒップ ÷ 4 + 0~1cm |
後幅 | ヒップ ÷ 4 + 5~6cm |
衽幅も体型により調整できます。
お茶などのお稽古やお茶会に着る着物は前幅を広めにしておきたいという方もいらっしゃるでしょう。
前幅を広くとる場合は2~3分ほどプラスします。
あまり広くしすぎると気崩れることがありますので注意が必要です。
自分にぴったりの着物を購入するためには、正確なマイサイズを知っておく必要があります。
1 女性編
女性の身丈は身長と同じサイズにします。
仕立て上がりを購入する場合は身長±5cm程度の差でもお端折りで調節して着られますよ。
身幅の目安は次の通りです。
ヒップのサイズ | 前幅 | cm | 後幅 | cm | 衽幅 | cm |
83~85cm | 5寸8分 | 22 | 7寸5分 | 28.4 | 4寸0分 | 15.2 |
86~88cm | 6寸0分 | 22.7 | 7寸5分 | 28.4 | 4寸0分 | 15.2 |
89~92cm | 6寸3分 | 23.9 | 7寸8分 | 29.5 | 4寸0分 | 15.2 |
93~96cm | 6寸5分 | 24.6 | 8寸0分 | 30.3 | 4寸0分 | 15.2 |
97~100cm | 6寸8分 | 25.8 | 8寸3分 | 31.4 | 4寸0分 | 15.2 |
101~104cm | 7寸3分 | 27.7 | 8寸5分 | 32.2 | 4寸0分 | 15.2 |
2 男性編
男物の着物はお端折りがないため、身丈と着丈が同じになります。
身丈は首の後ろ、付け根にある骨の出た部分からくるぶしまでを測りましょう。
男性の着物の身幅の目安は次のようになります。
前幅 | ヒップ ÷ 4 + 0~2cm |
後幅 | 前幅 + 1寸5分(5~6cm) |
男物の一般的な袖の寸法は次の通りです。
袖丈 | 1尺3寸 |
袖口 | 7寸 |
袖付け | 袖丈-人形 |
人形 | 2寸5分 |
人形とは袖付けの下、女性用でいう振りの部分です。
男物は振りの部分が開いておらず縫い付けてあります。
身長の高い方は袖丈を1尺3寸5分から1尺4寸で仕立てる方もいらっしゃいます。
袖丈の基準として考えられているのが身長×0.3です。
袖幅は裄の1/2+2分、肩幅は裄から袖幅を引いた寸法になります。
これらは基本的なサイズですので、体型や好みに合わせてマイサイズを決めていきましょう。
生地からお仕立ての際に
着物の生地のことを反物といい、1反の長さは3丈(約12m)です。
反物の幅も決まっており、女性は1尺幅(37~38cm) 男性は1尺5分幅(40cm)となります。
背の高い方はクイーンサイズやキングサイズの反物が必要です。
はじめての着物を仕立てるときにマイサイズを測って記録しておきましょう。
その寸法を基にして、2枚目以降の着物や長襦袢、羽織やコートなどを仕立てていきます。
仕立て上がりの着物を購入するときにもマイサイズを参考に選ぶことができますよ。
コートや羽織のサイズは?
コートや羽織は着物のサイズをもとに仕立てます。
コートの裄は着物の裄よりも3分広く、羽織の裄は着物よりも2分広く仕立てましょう。
コートや羽織の袖丈は、着物の振りが飛びださないように少し短めにします。
リユース着物のサイズ選び
リユースの着物でぴったり同じサイズのものを探すのは困難ですが、できるだけマイサイズに近いものを選びたいですよね。
身丈はマイサイズの±5cm程度の場合、お端折りで調節ができます。
裄は±3cm以内程度なら着付けで調節して着られますよ。
裄が長い場合は衣紋をきつめに抜く、衿合わせを詰めるなどで裄を短めにするなどの着付け方をします。
裄が長すぎて調節できないときは裄丈の仕立て直しに出しましょう。
もともと着物は、袖口が汚れにくく動きやすいようにと裄を短めに着ていました。
最近の洋服を着慣れていると袖が短く感じるかもしれませんが、着物では手首の骨の出た部分(尺骨茎状突起)あたりに袖口がきます。
短めが気になるときは、衿合わせを広めにしたり、衣紋を広めに抜いたりなど着付けで調節してみましょう。
調節しても短めが気になるようであれば、裄出しの仕立て直しに出しましょう。
袖付けの縫込み(縫い代)に余裕があれば裄を出すことができますよ。
色や柄は気に入っているけど、サイズが合わないという着物でも仕立て直しができる場合があります。
どうしても気になるというときは購入したお店に相談してみましょう。
まとめ
着物に慣れていないときは着物のサイズがわかりにくく購入をためらうことがあるかもしれません。
一度正確にマイサイズを決めておくと、その後はスムーズに好きな着物を選びやすくなります。
着慣れてくると着心地のいいサイズ感もつかめてきますので、マイサイズで好きな着物を楽しんでいきましょう。