「着物を普段着として着るのはおかしい?」「なんでジロジロ見てくるのかな?」など、着物を普段着として着こなすことに不安を感じている方も少なくありません。
結論からお伝えすると、着物を普段着として着用することは「おかしくありません」。どんな衣装をプライベートで着ようが個人の自由ですよね。しかし、ジロジロと見てくる人が多いのも事実です。それは、日本の伝統衣装である着物なのに、現代の日本では着物離れが進んでいるからです。
今回は、普段着として着ることの疑問点などにお答えしていきます。着物を普段着として楽しみたいと考えているけど不安に感じている方は、ぜひ最後まで読んで堂々と着物を着ることの素晴らしさを知ってくださいね。
着物を普段着として着るのはおかしい?
着物を普段着として街中に着ていくことは、何もおかしなことではありません。着物は、日本の伝統衣装です。長い歴史があり、私たち日本人の体型に合わせた作りになっています。
確かに、近年では着物を着ている方を街中でお見かけすることが減ってしまいました。これは、洋服の方が簡単に着られて身軽だと感じる方が多いからです。また、洋服が日本で普及し始めた頃から、着物業界で「和服と洋服の差別化」を戦略として行うようになります。
こうした差別化の結果、「和服は普段着ではなく、品格のある特別な時に着る衣装」として日本人に定着してしまったのです。そして、着物業界も七五三や結婚式などの品位を求められるシーンの着物ばかりを作り出し、販売し続けました。
これらのことから日本人の着物離れは加速し、現代の日本では「着物は特別な日に着る衣装なのに、なぜ普段着としてきてるの?」という周りの視線が出来上がってしまったのです。
しかし、それはあくまでも日本人の感覚の話で、実際に着物を普段着として着てはいけないという法律やルールがあるわけではありません。
個人が何を着ようと自由です。着物を普段着として着ることで、誰かに迷惑をかけているわけではありません。ぜひ、洋服のスカートかパンツを選ぶように、着物を普段着として選んでスーパーでもコンビニでもちょっとしたお買い物出かけてみてください。
ここまで、着物を普段着として着ることはおかしくないとお話ししてきましたが、やはりいきなり周囲の目は変わらないもの。ある日突然着物を普段着として着たら、もしかしたら「何で着物なの?」「今日は何かあるの?」などと色々な人に声をかけられるかもしれません。
現代の日本の着物離れが深刻化している中で普段着として着るのですから、多少周囲から見られてしまう覚悟をして着た方が良いでしょう。何も悪いことはしていませんから、堂々としていればいいのです。
ぜひ着物を普段着として着て、お出かけしてみましょう。
普段着として着物を着るときのアレコレ
ここからは、着物を普段着として着てみたい方のために、着物初心者の方が気になる質問3つに答えていきます。着物離れが加速している日本人だからこその疑問です。これを読んで、着物のイメージを新しくしましょう。
着物って動きにくい?
普段着として着る着物は「動きやすく作られています」。皆さんがイメージしている動きにくい着物というのは、結婚式や七五三などの正式な場面で着る品格の高い着物です。
確かに、品格の高い着物に関しては細部まで丁寧な作りになっていて、しっかりと着付けをする方も多くいます。そういった厳粛な場面で着る着物は、多少の動きにくさはあっても自分が忙しなく動く必要がないため、品格重視で作られているのです。
一方、普段着として着る着物は素材も軽いものが多く身軽に作られています。昔は、庶民が日常的に着ていた着物は、動きやすいように袖や裾は短くなっていました。また足元が男女構わずスカートのようになるのは、高温多湿の日本の気候に合わせて通気性をよくするためです。
どの場所で着る着物かによって「動きやすさより品格を重視する」のか「品格よりも身軽な動きやすさを重視する」のかが異なります。着物は動きにくいものというイメージを持たれている方は、品格重視の正式な場面で着る着物のイメージしかないのでしょう。
普段着として着る着物は、イメージされているよりもっと気軽に着られる衣装ですよ。
着物って暑い?
「着物は暑いってよく聞くけど本当?」など、着物には季節感がないように感じている方も少なくありません。着物は、季節に合わせて正しいものを選ぶことで、真夏でも着られるほどに涼しい衣装になります。
着物にも季節があり、7・8月などの真夏に適しているとされるのが「夏着物」です。(薄ものとも言います)夏着物は、「絽(ろ)」や「紗(しゃ)」と呼ばれる織り方で、透け感が出るように織られている絹の着物です。
また、サマーウールなどで透け感のある生地1枚で仕立てられた着物や、麻素材でできた着物も夏着物の部類となります。
こうした夏着物は、吸水性・速乾性・通気性なども考えられて作られており真夏に適しているのです。
夏着物の他に、6・9月などの真夏ではないけれど暑い時期に着る「単衣(ひとえ)」と呼ばれる着物もあります。単衣は、裏地はついていないけども透けない1枚生地で仕立てられているものです。
皆さんが暑いとイメージされている着物にも、しっかりと季節があり夏には夏に適した素材で作られているため、暑さをそこまで感じることはありませんよ。
着物って寒い?
「着物は足元がスースーして寒そう…」などのイメージを持たれている方もいらっしゃるでしょう。先にもご説明した通り、着物にも季節があります。
真夏に着る「夏着物」や真夏ほどではないけど暑い時期に着る「単衣」の他に、「袷(あわせ)」という着物があるのをご存知でしょうか。
袷は、10〜5月の秋・冬・春のシーズンに着られる着物で、1年で最も長い期間着ることができるものです。生地が薄いか厚いかにかかわらず、「裏地が付いて二重に仕立てられている」着物が袷となります。
真冬でも、生地の厚い袷を着て、中には着物用の肌着である長襦袢を着ます。そして、外出時には着物用のコートや羽織があるため、寒さを感じることなく真冬でも着物を楽しめますよ。
個人の自由を奪う「着物警察」
「着物警察」とは、着物を着ている人に対して「着物と帯の色が合っていない」「帯締めの位置が高いんじゃない?」などといきなり指摘をしてくる方のことをいいます。
時には、「その着物はポリエステルでしょ?」などのバカにするような発言もあるようです。「着物警察」とインターネット上で検索すると、被害に遭われた女性たちの悲痛な叫びを多く目にすることでしょう。
そもそも、着物警察という言葉がよく聞かれるようになったのはここ数年です。なぜ急にそのような言葉が聞かれるようになったのかというと、着物に関心のある若い女性が増えてきたからだと考えられます。
近年、夏の風物詩である浴衣だけではなく、普段着として着物を着たいという女性が増え街中でも着物を着ている若い女性を見かけるようになりました。しかし、着物を着ている若い女性が増えたことで、もともと着物の知識もや経験も持ち合わせている40代以降の女性から指摘されてしまうという着物警察が現れ始めたのです。
こうした失礼極まりない着物警察が原因で、さらに日本の着物離れは加速していくでしょう。
確かに、着物には正式な場所できる品の高い着物から、普段着として着られるカジュアルな着物まで幅広くありますが、普段着としてきている以上「どうやって着ようが個人の自由」です。
着物は楽しく着るのが一番
今回は、着物を普段着として着ても良いのかについてご紹介してきました。本記事で繰り返しお伝えしてきましたが、個人が普段着として着物を着ることは自由です。
普段着用の着物を正式なシーンに着ていくことは控えるべきですが、普段着として着るならば個人が楽しんで着られることが一番良いのではないでしょうか。普段着として着物を着たいと考えている方は、ぜひ堂々と着物を着て楽しく過ごしましょう。