アンティーク着物とは、戦前に着用されていた着物のことです。ヨーロッパなどの外国文化を取り入れながら、移ろいゆく着物ファッションとして楽しんでいました。この記事では、アンティーク着物の特徴を詳しく解説するとともに、購入する際の注意点や購入場所をご紹介します。
アンティーク着物ってなに?
「アンティーク着物」とは、明治時代・大正時代・昭和時代などの戦前に着られていた着物のことです。戦後に作られたものは「レトロ着物」や「リサイクル着物」と呼ばれています。
特徴としては、全体的に小さめに作られていることや、現在より70年以上前に作られているため生地が古いことが挙げられます。購入する際にはいくつかの注意点がありますが、記事の後半でご説明します。
デザインにはおもに2種類あり、和と洋が融合された「大正ロマン」と、鮮やかな色彩で表現された「古典柄」です。現在人気になっているのは大正ロマンで、現代にはないヴィンテージ感があります。近年流行の華やかなデザインも良いですが、アンティーク着物は何にも代えがたい魅力があるのです。
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明治・大正時代の着物の特徴
一口にアンティーク着物といっても、各時代ごとで特徴があります。
①明治時代に着用されていた着物の特徴
【明治初期〜中期】
・紋様は小さく、色も地味なものが多かった
・着物に合わせるように帯も無地で地味な色(黒や茶色など)が基本
【明治後期】
・徐々に明るい色の着物や帯も増えた
・女子高等学校の制服として「海老茶式部」という袴ファッションが浸透した
明治初期から中期にかけては、それ以前の「奢侈禁止法(しゃしきんしほう)」の名残があったため色やデザインは地味なものが多く、おしゃれを楽しむことはありませんでした。奢侈禁止法とは、贅沢をしないように強制する命令の一種です。
しかし、奢侈禁止法も徐々に薄れ、明るい色を着用できるようになりました。この頃から、女性が学校に通うことも許され、女子高等学校では「海老茶式部」という袴スタイルが制服のように浸透したのです。
②大正時代に着用されていた着物の特徴
【大正初期〜中期】
・洋服が普及し始めたと同時に、着物も華やかなデザインが多くなる
・女学生の制服スタイルが変わり、矢絣柄の着物と行燈袴、ブーツを合わせた和と洋を融合させたファッションになる
【大正後期】
・アール・デコの影響を受け、幾何学模様が増え始める(銘仙とも呼ばれる)
・銘仙の着物は、普段着として着用されるようになった
大正時代に入ると、当時ヨーロッパで流行していた「アールヌーボー」という絵画的表現の影響を受けます。さらに、日本で化学染料が発達したことも相まって、色鮮やかな着物が多く誕生しました。薔薇などの西洋に咲いていた花のデザインも加わり、多彩な模様が主流となります。
これまで「海老茶式部」という袴スタイルだった女学生の制服は、「矢絣柄(やがすりがら)の着物」と「行燈袴(あんどんばかま)」にブーツを合わせるという西洋と和を融合させたファッションになりました。現代でいうと「大学の卒業式」で着用する着物をイメージすると良いでしょう。
そしてヨーロッパやアメリカを中心に流行していた「アール・デコ」という幾何学調に影響を受け始めます。幾何学模様の着物は「銘仙(めいせん)」とも呼ばれ、この時代では普段着として着用されるようになりました。
こうした、日本とヨーロッパの文化が融合したものが「大正ロマン」と呼ばれ、対象ファッションの中心となります。
③昭和前期の着物の特徴
続いて、昭和前期の着物の特徴をご紹介します。
【昭和前期】
・女学生の制服は「セーラー服」が一般化され、学校では着物を着なくなる
・大正ロマンに引き続き、アール・デコの影響を日本全体に受け、幾何学模様や人工的でポップなデザインが流行する
・しかし戦争が始まると一変し、割烹着やもんぺを着用する
この時代でも大正ロマンを強く引継ぎ、アール・デコの影響を日本全体に受け、幾何学模様やポップなデザインが流行します。また、パリから輸入されてきた「レースの小物」「パラソル」「ビーズバッグ」などが同時に流行りました。
女性は、大正時代初期あたりから普及し始めた洋服が深く浸透することはなく、和を含めた大正ロマンファッションを楽しんでいました。その一方で、これまで袴スタイルだった女学生は「セーラー服」が誕生し一般化されたことで、学校では着物を着用しなくなります。
こうした目まぐるしいファッションの波がある中、戦争によって再び「派手な服装を規制される」という事態になりました。これまでポップなデザインを楽しんでいた女性も、割烹着やもんぺを着用するようになります。木綿生地で袖が短く作られている「筒袖(つつそで)」が多く着用されました。
戦争が終わった後は、和服中心の生活には戻らず、すぐに洋服中心となります。家庭用ミシンが普及し、さらに洋裁ブームもあったため着物よりも簡易的に着脱できる洋服が主流となっていきました。
アンティーク着物を購入する際の注意点
次に、購入する際の注意点をご説明します。
①生地の劣化・変色・サイズ感を確かめる
購入する際には、必ず「劣化」「変色」「サイズ感」を確かめましょう。
冒頭でもご紹介したように、今から70年以上前に作られている着物です。そのため、経年劣化して生地が弱くなっていることが多くあります。生地の劣化を気にせずに購入してしまうと、着用した時に破けてしまうこともあるため注意が必要です。特に、お尻や裾・ひざなどの生地が薄くなっていないかなどをチェックしましょう。
また、変色していることもあります。「外側からは見えない部分だから気にしない」という人は良いですが、変色の度合いによっては外見にも影響してしまうでしょう。あまりにも変色している着物はおすすめできません。
そして、昔の女性に合わせて作られているアンティーク着物は小さいサイズが多いです。見た目が好みでも、自分の身体のサイズに合っていなければ不格好になってしまいます。正しいサイズのものを見つけましょう。
②アンティーク帯の老朽化にも注意する
合わせる帯は、同じくアンティークのものがおすすめです。マッチした雰囲気で着こなしができるでしょう。
ただし、帯も同じく経年劣化していることが多いです。特に絹の帯は劣化して破れやすくなっていることもあるため、劣化が激しい帯を購入してしまうと結ぶ時に破けてしまうこともあります。
なお、アンティーク帯も小柄な女性に合わせて作られているため短いことがあるので注意しましょう。
アンティーク着物はどこで購入できる?
購入できる場所は、「実店舗」または「ネットショップ」です。近くに「実店舗」がある場合は実際に目で見て触って購入できる「実店舗」をおすすめします。とはいえ最近ではなかなか実際に着物に触れて購入できるお店も減ってきました。近くに無い場合は着物を取り扱っているネットショップを覗いてみてください。できれば楽天などのモールより、実際に着物を販売しているお店の公式ネットショップが安心です。
実店舗で購入する場合には、「アンティーク着物専門店」「骨董市、蚤の市」「リサイクルショップ」などがあります。正しい知識と専門的アドバイスを受けながら購入した方が良いため「アンティーク着物専門店」などの専門のお店が良いでしょう。
(まとめ)アンティーク着物をおしゃれに着こなそう
この記事では、アンティーク着物の特徴について詳しく解説しました。アンティーク着物とは戦前に作られた着物のことです。
現代では、そのまま着こなすこともおしゃれですが、着物の下に洋服を重ねて着用する「洋服ミックス」という着方も流行っています。現代の着物ではワンパターン化してしまったという人は、アンティーク着物で大正ロマンを楽しんでみませんか。
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