浴衣と着物は違う?意外と知らない見分け方と着用シーン
皆さんは「浴衣」と「着物」の違いをはっきりとご存知でしょうか?「何となくなら知っている」という方が多いかと思います。本記事は、「浴衣」と「着物」の違いや着用シーンについてご紹介していきます。2つの違いが分かると、ハードルが高いと感じていた浴衣や着物にチャレンジしやすくなるでしょう。
浴衣と着物は違う?
「着物」とは、“着る物”という意味で、着る物全体の総称として呼ばれていました。しかし、明治時代に西洋の服が日本にやってきて“洋服”ができたことで、「着物」は“和服”をさすようになりました。
そんな「着物」の一種が「浴衣」です。仕立て方や形、構造など基本的な部分では「着物」と「浴衣」は同じですが、決定的な違いは着用シーンにあります。寝巻きなどにさっと気軽に着れる着物が「浴衣」、それ以外は「着物」という区別になります。さらに、「着物」にはさまざまな着用シーンが存在し、奥が深い衣装です。今回は「何をどんな時に着ていけば良いのか」についても触れていきます。
それでは、「浴衣」と「着物」それぞれの特徴について見ていきましょう。
浴衣の特徴(形・素材・着用シーン・着方)
「浴衣」とは元々、“湯帷子(ゆかたびら)”の省略された言葉で、昔の貴族が沐浴時や寝巻きとして着ていた、麻の単衣(ひとえ)のことでした。「単衣」とは、裏地もなく布1枚で仕立てられている着物のことをいいます。まずは、「浴衣」の特徴をご紹介していきましょう。
・形について
形については、「浴衣」も「着物」も同じ形状で、両方とも1枚の布から作られております。先述の通り、単衣は裏地がなく1枚で作られているものです。別に、裏地があり生地が2つ合わせて仕立ててあるものを「袷(あわせ)」といいます。
女性用の浴衣ですと、幅約36cm・長さ1140〜1200cmもの大きな布から作っていきます。
・素材について
「浴衣」は単衣で仕立てられているものが多いため涼しく着れることから、夏の風物詩として親しまれていますよね。麻や木綿生地は、繊維が伸びにくく生地が丈夫で吸湿性が高い素材です。よく汗をかく時期ですが、汗や湿気なども吸収してくれるため、さらっとした着心地を楽しむことができるでしょう。
現代はカラフルで個性豊かなデザインが多いですが、昔は寝巻きなどに使用していたため、白や紺といった無地の浴衣が一般的でした。
・着用シーン
先述の通り、浴衣は汗をたくさんかく時期におすすめの着物です。着る時期としては5月〜10月が多いでしょう。
着用シーンは、主に夏祭りや花火大会などの夏のイベントに着ている人が多いのでないでしょうか。木綿や麻ですので、蒸し暑い時期に涼しく着こなすことができます。風通しも良く、汗や食べ物で汚してしまった時なども、簡単に洗濯することができるのも浴衣の良いところです。また、浴衣を着ることに慣れてきたら、「寝巻き」としてもオススメです。なぜなら、吸湿性も速乾性も高い浴衣は、寝苦しい夏の夜にぴったりだからです。
・着方について
「浴衣」は、「着物」と違い素肌の上に着用します。浴衣は夏に着る機会が多いので、下着の上に直接着ることができるのです。そして、「浴衣」も「着物」も同じですが、寸胴の方が綺麗な形で着こなせるため、基本的には「ボディラインを隠す」ように着付けします。細身の方は、タオルを挟むなどして調節すると、綺麗な仕上がりになりますよ。
また現代では、ユニークな柄も増えている浴衣ですが、それに合わせてユニークなアレンジが流行っています。例えば、「浴衣を着てハット帽子を被る」「浴衣とハイヒールを合わせる」などです。こうしてみると、「浴衣」は“自由にアレンジできる遊び着”とも言えるでしょう。
着物の特徴(形・素材・着用シーン・着方)
ここからは「着物」について詳しく見ていきましょう。一般の方は、浴衣より着る機会が少ない着物ですが、「どんなときに着るものなのか」など着物を知っていけば、あなたも着物を着てみたくなるはずです。
・形について
先ほど既に述べた通り、「着物」と「浴衣」の形状は同じです。浴衣を着たことがある人は、あまり抵抗なく着物を着ることができるでしょう。しかし、浴衣と違うところは、着物を着る時には「長襦袢(ながじゅばん)」という肌着を必ず着ることです。着物は高価なものが多いため、汗や汚れが内側に付かないように、長襦袢をインナーとして着物の下に着るのです。
・素材について
着物は浴衣と違って、様々な素材が使用されています。いくつか代表的な素材をご紹介します。
「絹」は滑らかな手触りと光沢感が魅力的の素材です。着物は、冠婚葬祭などに着ていくことが多く、上品に見せられる素材の一つです。ただし、絹の欠点は、水に弱く濡れると縮んでしまいます。また摩擦にも弱いため、毛羽立ちにやすく長期にわたって着ることは難しいと考えられます。
「麻」は浴衣と同じ理由で、通気性がよく、仮に汗をかいても速乾性も兼ね揃えているので、非常に優れた素材です。ただし、麻の欠点は、シワになりやすいことです。麻の着物を着たまま、長時間座っていると、座っていた部分にシワができてしまう場合もあるでしょう。
「化学繊維」の素材で作られた着物もあります。ポリエステルやレーヨン、ナイロンといった素材は、水や摩擦に強いため洗濯も可能です。そしてお値段もリーズナブルなので、着物初心者にオススメの素材でしょう。ただし、「化学繊維」で作られた着物は、吸湿性が乏しく静電気を起こしやすいという欠点もあるので注意も必要です。
「ウール」は羊の毛が原料ですので、高い保湿性、吸湿性が魅力の素材です。型崩れもしにくく、こちらも初心者へオススメの素材となります。ただし、「ウール」は害虫被害に遭いやすいため、防虫剤などでの対策が必要になる場合が多でしょう。
・着用シーン
着物にはそれぞれ、「格」と呼ばれる位が定められています。その格によって着用シーンが異なってきます。
最も格の高い着物で有名なのが、「黒留袖」です。黒留袖は、第一礼装として格が定められており、結婚式の時の両家の母親が着ている着物のことです。また、「打掛(うちかけ)」といって、よく花嫁が着ている「白無垢」も第一礼装に入ります。さらに、未婚女性が着ることのできる「本振袖」や葬式の時に着る「喪服」も第一礼装です。
次いで格が高いのは、第二礼装と呼ばれる「訪問着」「付け下げ」「お召」「色無地」などがあげられます。これらは、華やかな場所へいく時に着ていく場合が多いです。第一礼装とは違い、第二礼装は未婚・既婚は関係なく着ることができるのが特徴です。親戚の結婚式や、パーティ、お茶会などに着ていきましょう。
そして、カジュアルな場所に着ていく着物に「江戸小紋」「小紋」「浴衣」などが含まれます。これらは、正式な場所ではなく、気取らない場所へお出かけする際に着ていくのがオススメです。
・おまけ
ゆかたの衿がピシッとたっていると素敵ですよね。どうすれば衿をきれいに浴衣を着こなせるのか、動画で解説してみました。
まとめ
本記事では、「浴衣と着物の違いについて」ご紹介してきました。着物は奥が深く、知れば知るほど面白い「日本文化」のひとつです。ここでは紹介しきれなかった格の種類もたくさんあり、TPOに応じてさらに細かく着物を選ぶことができます。もし興味がありましたら、自分自身で調べてみてもいいですね。知識がないまま適当に着物を選んでしまうと、場違いや失礼にあたってしまう恐れもあるので、着物初心者の方は着物の販売店などに聞いてみましょう。
また、「着物を始めるのはちょっと自信がない」と思っている方も、まずは「浴衣」からチャレンジしてみてはいかがでしょうか。今年の夏祭りは、ぜひ浴衣でお出かけしてみてくださいね。